弁護士の事件簿・コラム

台風の被害と保険について

弁護士 井上  泰

 近年、台風による自然災害の被害が甚大なものとなっています。
 今年も台風21号に続いて24号が列島を縦断し、各地で暴風や大雨による被害が生じており、被災されたみなさまに謹んでお見舞いを申し上げます。

1 台風の暴風による被害
 台風の暴風によって、自宅の屋根が飛ばされたり、風圧や暴風で飛ばされた飛来物があたって、窓ガラスが割れたりした場合には、どうすればよいのでしょうか。
 暴風で飛来したもの自体を特定でき、その管理や保管等にその所有者ないし管理者の過失がある場合には、その所有者ないし管理者に損害賠償をすることが可能と考えられます。
 しかし、そもそも飛来物の特定すら不可能な場合が多く、また、これまでに無いような暴風被害となると、自然災害の不可抗力として管理者の過失自体を問うことが難しい事例も生じます。
 では、このような被害については自費で修理しなければならないのでしょうか。
 この点、まずは家屋に関して加入している火災保険や住宅総合保険の契約の約款を確認し、このような台風の暴風などの被害、いわゆる「風災」に保険の適用があるかを確認してみてください。
 上記保険の契約内容に「風災」が含まれていれば、その保険の適用を受けて、修理に関して保険金がおりる場合があります。
 是非、約款を確認の上、みなさまの加入している保険会社への問いあわせを行うことをおすすめします。
 ただ、保険の約款によってはフランチャイズ方式といって被害金が一定額(20万円)以下の被害額では適用されないとか、免責方式として5万円から10万円の免責金額を設定し、その金額以下は支払われないとする契約がありますので、その点に注意が必要です。
 フランチャイズ方式とは保険の自由化前の契約が古い火災保険などで多く採用されていた契約方式です。20万円以下では保険金の支払はありませんが、それ以上の金額の被害であれば全額保険の適用で支払われるという契約方式です。
 他方、最近は免責金額方式で保険契約をするときに契約者が免責金額を設定することが可能な場合が増えています。
 免責方式であれば例えば免責金額を5万円と設定した契約で被害金額が8万円だった場合、8万円と5万円の差額3万円が支払われ、他方被害額が4万円だった場合には5万円以下として保険金が支払われないというものです。

2 洪水による水害について
 また、洪水による被害についても「水災」として住宅総合保険の契約内容に附帯契約がついていれば、その補償対象になる場合があります。
 しかし、従前の住宅火災保険や普通火災保険の旧契約の場合には業界共通の標準約款に水災が入っていないことが多く、その場合保険の適用はありません。
 また、住宅総合保険や近時の火災保険において、その附帯約款に「水災」が含まれている場合でも保険適用の条件が床上浸水に限られたり、建物の30%以上の損害が生じた場合など条件が厳しい点に特徴があります。
 従って、まずはご自身の火災保険に「水災」の適用があるのか、契約約款にて保険内容をよく確認し、保険会社に問合せを行う事は風災の場合と一緒であり、また、実際に生じた水災被害に保険の適用があるかを確認する事が必要です。

3 住宅対象の保険と家財保険
 なお、住宅そのものの保険とその中の家財にかける保険は別契約となり、風害、水害によって家財が被害に遭った場合には住宅自身の保険ではなくその補償は家財保険の対象となります。
 この点も注意すべき点となりますので、ご自身の加入保険の種別や約款を確認して、補償を受けられるかどうかを保険担当者に問合せを行ってください。

4 保険の適用を受けるための初期の注意点
 なお、これらの保険で補償をうけるためには、保険の適用を受けるための被害状況の証拠化が必要となる場合が多いので、片付ける前にまずはデジカメ等で被害状況が確認出来るよう写真を多く撮影しておくことや早期に業者に見積もりを取っておく事が望ましいと思われます。

5 保険の見直しやこれから締結する場合
 台風などの自然災害に備えて、今後保険の見直しなどを行う場合には、自分の住んでいるところのハザードマップや近年の傾向などを考えて、「水災」の附帯契約をつけるかどうかや、免責金額の設定についてどうするかを判断するべきと思われます。
 附帯契約を増やせば、その保険料が上がるのが一般的ですし、上記免責方式では免責金額が低くなる(小さな被害金額でも保険が適用されるような契約にする)と保険料が上がることから、いざというときの備えとして費用対効果を的確に分析して契約をすることをお勧めします。

6 おわりに
 実際、自分の加入している保険について担当者の説明を聞いたがよく分からない場合や保険適用について疑問が生じた場合、トラブルが生じた場合には是非、法律専門家にご相談ください。

「弁護士の事件簿・コラム」一覧へ »